ストレスが心の病を引き起こす、ということは知られるようになってきましたが、逆に心の病の原因がストレスだけとはかぎりません。患者さん自身は「このストレスが心の病の原因じゃないか」と思っていても、実は他の要因が関係しているというケースも少なくないのです。そのため心療系の診察ではカウンセリングをひじょうに大切にしています。
身体のケガであれば外から見てもわかりますが、心のケガは外から見て判断できません。ですから診察では患者さんを全体的にとらえることが基本となってきます。全体的にとらえるというのは、患者さん自身の会話の仕方や態度や表情、しぐさといった外面的なところはもちろん、どうしてこの苦境に陥ったのかを内面からとらえようとします。そのため患者さんの生育歴や家庭環境、職歴や性格などさまざまなことを尋ねられます。
病気だけを治してくれればいいと思う方もいるかもしれませんが、これらは発病前の全体像を理解するための大切な情報なのです。
そうして患者さんのストーリーを把握することで、どうして今の苦境に至ったかの理解が進み、治療方針が決めやすくなるのです。患者さんの中には自分のことを話している中で気づきを得て、楽になる方もいるようです。